薦めてくれる人があったので、遅ればせながら「三体」を読んだ。
三体問題やファーストコンタクトなんて古典的な命題を、文化大革命を出汁に煮込んでここまで美味しくするとは、すごい作家だ。
太陽(恒星)アンプ、一次元の陽子、陽子コンピュータ(というかほとんどAI/しかも量子もつれでリアルタイムモニタリング)、ミクロコスモスの知的生命体なんて数々のガジェットも楽しめた。
でもなによりも、文革の一場面から物語が始まり、人民解放軍の人海戦術を思わせる解決策を提示して終わるあたりにニヤニヤできる(終盤の畳み方は急ぎすぎでハラハラしたが)。
作者は農村生まれの生粋の中国人。神のいない(信仰の土壌のない)人民共和国で人智を超えたものに救済を求めるなんて発想が湧くことが不思議だっが、考えてみれば人民を指導する「党」なんてものを戴いているわけで、宗教を信じてる人と根幹はトポロジカルなのかなとも思ったり。
それにしても、父を糾弾してなぶり殺した少女近衛兵たちに、毛沢東に使い捨てられて零落した人生を後日語らせることで、造反有理に浮かれた子供たちの罪を人類の悪性として客観化する葉文潔の視点は、SF作家ならではの視点だ。久々にSFらしいSFを読んでちょっと興奮した。第二部となる「黒暗森林」が楽しみ。
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